さて、前回に引き続き、TV撮影の報告です!
<前回、「修理ご依頼の接客シーン」の記事はこちら 。>
撮影2日目は、いよいよアトリエでの修理の作業の撮影です。
修理の内容は、大きく分けて二つ。
まずは、サイズ直し。
現在のサイズだと、小さすぎて入らないため、エンゲージリングとしてお使い頂くために、サイズを広げます。
次が、取れてしまった石の追加取り付けです。
付いていたと思われる7つ目の石、アメジストをお入れします。
それでは、サイズ直しの様子から。
サイズを大きくする修理は、リングを一度切断し、大きくする分の金属(ジュエリー用語では地金と言います)を挟み込むように足して、溶接(ジュエリー用語ではロウ付けと言います)しなおし、サイズを広げます。
今回のリングのサイズ直しで難しいのは、アンティークに近い70年近く前のリングなので、拝見する限りはゴールドなのですが、地金の種類を表す刻印が無いのです。通常貴金属は、「Pt900」(プラチナ)や「SV925」(シルバー)といった刻印が入っていて、18金ゴールドの場合は、「K18」もしくは「750」という刻印があるのですが、お預りしたリングにはそういった刻印が無く、色合いなどから、14金のゴールドであると推測し、修理を進めることにしました。
地金の種類がわからないと、一番のリスクは、融点がわからないため、リングを溶接する際に、リング本体が解けたり崩れてしまったりする事です。
今回は、幸い、サイズを小さくするため、切り取った小さな地金の破片を使い、融点が予想以上に低くないことを事前に確かめることが出来たので、少なくともその心配はなくなりました。
次に難しい点としては、石が入っている指輪のサイズ直しなので、溶接の際に石に熱が伝わってしまうと、石が変色してしまったり、割れてしまったりするので、地金部分は溶かしながら、石には熱が伝わらないように工夫する必要があります。
そこで、登場する秘密兵器は「水に濡らしたティッシュ」です!
写真だと小さくてわかりにくいですが、石の部分に、濡れたティッシュを巻きつけ、そのまま酸素バーナーで石と反対側、サイズ直しをする部分を溶接します。
金は、熱伝導がそれほどよくないので、暫くは火が当たっている箇所だけが赤く熱されます。暫くすると、リング全体に熱が伝わり、ティッシュから激しく蒸気が上がりますが、水が蒸発しきらない限りその部分は100度を越えることが無いため、石が熱から守られます。溶接する部分は地金の溶ける約1000度に、石の部分は100度以下に。
すばやい手際と正確さが求められるまさに職人芸です!
特に修理でお預りするリングの場合は、一つしかないもので失敗は許されず、また今回のように地金の種類がわからない場合など、実際に火で熱してみないと溶接できるかどうかわからない一回限りの出たとこ勝負なのでなおさら。
無事、見事一回の溶接でサイズ直しが出来ました!
さて、次回はいよいよ石留めです。