ジュエリーを通した被災地支援のご報告

代表の藤森です。

震災以降、ジュエリーを通して力になりたいという思いを持ち続けていましたが、この度「ジュエリーを作る」事で被災地の力になる事が出来る貴重な機会を頂き、おかげさまで無事実現したのでご報告させていただきます。

昨年、11月2日に石巻の桃生中学校で、キャリアセミナーの講師として訪れた際に、同じ講師陣として、 石巻でたらこ屋さん”湊水産”を経営する木村社長とご一緒させていただきました。

石巻でのキャリアセミナーの様子はこちらをご覧下さい

湊水産さんは、津波により工場もご自宅も浸水し、震災直後は、本当に大きな被害を受けたのですが、ボランティアの方の協力などを得ながら、ご家族、スタッフの皆様みなさん全員が不屈の精神で立ち上がり、なんと2ヶ月あまりで営業を再開したという奇跡のたらこ屋さん。

湊水産さんの復興の様子はこちらをご覧下さい

復旧後のご自宅はプロジェクト結の石巻での活動拠点となっていて、私自身もキャリアセミナーの前日にお世話になりました。

その際に、木村社長から、折角だからジュエリーの事で相談にのって欲しいと声を掛けていただき、お話を伺いました。

その内容は、ご自宅にあって津波で浸水してしまった桐ダンスから偶然発見されたお二人の結婚指輪を使って、今年20歳になる三女の娘さんに何か記念のプレゼントにしたというご相談でした。

結婚指輪を拝見させていただくと、ケースの外側は水に濡れてしまって少し傷んでしまっていましたが、中のリングは綺麗に無事でした。

25年前にお作りになったというお二人のリングは、プラチナとK18イエローゴールドのコンビで、表面に細かい模様が入っている職人技が光る手作りの素敵な指輪でした。

リングの内側には、お二人のご結婚の日付とイニシャルが、ご記念の文字として彫りこまれています。 25年前の1966年2月16日。 ちょうど震災の少し前に、銀婚式を迎えられたお二人でした。

大切な指輪をお預かりして、支援として加工させていただくということで、デザインをご提案させていただくことになりました。 ご夫婦お二人と娘さんのご希望を伺うと、出来たらペンダントにして身に着けられるようにしたいとの事でした。

ペンダントにするにあたって、出来る限り、元のお二人のリングはそのままの形で使いたいと思い、また毎日ずっと身につけても気にならないようにと思い、考えた結果このようなデザインでお作りする事になりました。

年末に、こちらのデザイン画を持参して、再度お打ち合わせしてデザインが無事決定。 こちらの指輪以外にも、以前リフォームをしたときにあまったプラチナの地金の塊をお持ちだということで一緒にお預かりして、娘さんの二十歳の誕生日までにお作りする事になりました。

2012年の年明けから制作を開始、残念ながら成人式には間に合いませんでしたが、 無事1月中旬にペンダントが出来上がりました!

出来上がったペンダントがこちらです!

お二人のリングサイズの違いを利用して、旦那様のリングの内側に奥様のリングが入るように並べました。 ちなみにお父さんのリングはサイズがとても大きいのですが、それでもご結婚式当日も指に入らず、ご結婚25年間ずっと身につけていらっしゃらなかったとのこと。なのでピカピカなんです。

そのままチェーンを通すと、身につけたときに縦を向いてしまうので、お預りしたプラチナの塊で、チェーンが通るバチカン部分をリングと同じ表面加工を施し作り、そこに二本のリングが下がるように工夫しました。

バチカンと奥様のリングは交差する部分で固定し、その上を旦那様のリングが自由に回転するようにセットしました。

お二人のリングそのものには何も手を加えず、内側の文字もそのまま残しています。

そして、バチカン部分の片側には、誕生日のプレゼントなので、娘さんの誕生石であるアメジストをご夫婦にも娘さんにも内緒でお入れしました。

そして、1月20日、出来上がったペンダントを持って、スタッフとともに再び石巻へ! 大雪の降る東京を早朝に出発したら、石巻はなんと快晴!無事到着して、いよいよお渡しです。

お待ちになっていた3人の前でケースを開けると、うわぁ~!という歓声。 デザイン画はご覧頂いてましたが、実際に出来上がったペンダントをご覧頂いて、こんなに喜んで頂けて私も含めスタッフ一同ホッと安心。

そして身につけてみたら長さもピッタリ。 サプライズでお入れしたアメジストにも、娘さんが大感激してくれてくれました。

お二人のリングサイズがこれだけ違っていないと出来なかったデザイン。 お母さんの周りを、お父さんがいつもくっついて離れずに回ってるから本人たちみたい!と 娘さんがおっしゃってました。 お二人の関係や個性が指輪にも現れていたんですね。

毎日ずっと身につけたられるようにデザインしたので、是非お守り代わりに身に着けていただけたら嬉しいです。

お渡ししたあと、ご夫婦と娘さんと色々お話を伺いました。

銀婚式を迎え、記念にどこかへ行こうかと話していたところに突然襲ってきた地震と津波。

数秒のタイミングで迫る津波から逃れ助かった奥さま、東京にいて1週間以上ご実家と連絡を取ることも出来なかった娘さん。

水も食料も電気も着替えも寝るところも何もない状態で始まった震災後の生活。

まだ瓦礫で道を歩く事も出来ないような状態で、駆けつけてきたボランティアの方々。

少しずつ少しずつ力をあわせて復旧していく中で見つかった結婚指輪。

その指輪を娘さんへのプレゼントとして加工する事になった我々との出会い。

もし津波で被災しなければ、ボランティアの方に指輪を見つけて頂いて、その指輪がこうしてご両親から娘さんへ受け継がれる事もなかったのではないか。

震災があったからこそ生まれた出会いや結びつきを、心から大切にしていく。

見た目は、町から瓦礫も片付いて、少しずつ傷跡がなくなっているように見えるが、一旦癒えてきた心も、また震災から一年(亡くなられた方にとっては一周忌となる)が近づくにつれ、また震災当時の事を呼び起こすことも多くなっていること。

今元気な自分たちは、生かされた運命を感じて、それぞれの人生を精一杯生きていかなければならないこと。

本来、ジュエリーは親から子、そしてまたその次の代へと、伝え受け継がれていくもの。

震災を通して出会った本当に素敵なご家族の、ご夫婦と親子を強く結びつけるような存在をお作りする事が出来たことは、本当に幸せな役目を与えて頂けたなと思っております。

ありがとうございました。

 

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