代表の藤森です。
定休日の7/11水曜日、友人Sと日帰りで鎌倉へ。
先日久々に飲んだ際に、澁澤龍彦の古寺巡礼という本が話題にのぼり、京都や奈良も良いけど、鎌倉も非常に良いという話になり、いざ鎌倉とばかりに二人で休みを合わせ早朝から鎌倉へ。
散策は、朝の北鎌倉から。
まずは駅の目の前の円覚寺 へ。
おそらく小学校の遠足以来の訪問。円覚寺は、漱石も参禅した臨済宗の禅寺で、座禅会なども頻繁に行われている。
小雨が降る朝の鎌倉は、何より静かで、空気が気持ちが良い。鎌倉独特の岩肌に囲まれた境内をのんびり歩く。
次に向かったのは、S推薦の東慶寺 へ。こちらは、円覚寺と対を成す尼寺で、駆け込めば離縁できるといういわゆる駆け込み寺として有名。
美しい山門へ続く階段を上り、境内へ。
降ったり止んだりの小雨の中を、ゆっくり歩いて廻る。境内の奥は墓地になっていて、和辻哲郎や鈴木大拙の墓などがあり、とても手入れの行き届いたお墓が非常にすがすがしく気持ちが良い。
平日の朝のためか、鎌倉のいたるところに雨の中庭師が仕事をしていたが、クリエイティブな仕事でかつ大きな必要があり、非常に数少ない”報われやすい仕事”だなぁ、などと勝手なことをSと話す。
岩肌には、岩タバコの葉が綺麗に茂っていたが、その花は非常に上品で美しいらしい。
(お寺のブログで四季折々の花の様子を紹介していてそちらに写真 がある。)
東慶寺 には、本堂の奥の小さなお堂に、水月観音という鎌倉時代の仏像があり、拝観予約をSがあらかじめしていてくれ、約束の11時に、個人宅でもある社屋の入り口のあけ、声をかけると中からとても品のよさそうな女性が現れ、我々を水月観音が奉られている水月堂へ誘ってくれる。
対面した水月観音は、高さ40cmほどの小さな木彫の坐像であったが、その姿と表情は非常に妖艶で、水面に写るとらえどころのない月を見下ろすその視線は、正面から見ると非常に優しいのだが、視線の先から見上げると、一見厳しく、見続けていると妖しく、エロティックな感じさえしてくる。
視線の豊かさや、ボリュームのある唇、蓮の花を持つ指先の表情、つま先だけ顔を出した体を包む衣のひだの柔らかさはなど、ミケランジェロ真っ青の表現力だと思う。艶やかで優しい観音様にじっくり魅入ってしまった。
予約をしていてくれたS、ゆっくりと拝観をさせていただいた東慶寺の女性の方(おそらく上記のブログを更新しているおかみさんではないかと思う)、とてもよい時間が過ごせました。ありがとう。
その後は、川の流れる紫陽花が綺麗な「あじさい寺」明月院 へ。紫陽花は、とっくに季節を過ぎたけど、まだいくつか綺麗に咲いていて、タンザナイトのような青みが強い紫色の紫陽花が美しい。
明月院を訪れた後、臨済宗の総本山建長寺へ。建長寺は、規模が大きく男性的で、ここまでしっとりとした風景から急に現実に引き戻された感じがする。境内一番奥、山の上にある半僧坊も少し現世利益の開き直りを感じて、少し興ざめする。
雨は、少し強くなったが、このまま入り口まで帰るのも癪なので、半僧坊から鎌倉の山へ入っていく「天園ハイキングコース」へ進む。今日は雨で、かなり本格的に山の中を進む人などいるわけもなく、つるつるすべる岩やドロドロの道を、全然ハイキングムードがない二人(僕なんて、革のスニーカーに、革の手提げカバン。。)が無茶して進む。土砂降りになったら軽く遭難できそうだねと冗談を言いながら、顔は真剣かつ大きく後悔。
40分程度で無事、覚園寺の脇まで抜けられたけど、鎌倉の山の中は、古い森の中に岩を掘り抜いた祠だらけで、つまり墓地の中を進んでいる薄気味悪さも手伝って、非常に長く感じた。
山から出てきたらもう2時。早くお昼が食べたいけど、二階堂あたりの静かな住宅街にあるお店は大抵ランチは2時まで。空腹のまま、鎌倉らしい路地を歩き、お店が開いてそうな小町通を目指す。
これまたSのお勧めで、名物カレー店のキャラウェイ へ。あとで調べてみたら、普段はいつも行列が出来ているらしいが、今日は、雨&既に3時過ぎということで、全く並ばず、むしろ空いている店内へ。
鶉の卵が入ったエッグカレーを食べる。まろやかで美味しい。以前カレーの会なるものを結成していたというSは、やたらと福神漬けを食べている。
カレーを食べたあとは、鎌倉駅の反対側、御成通りのほうへ。ここに、オーダー靴専門店「鎌倉靴コマヤ」があり、ここの2代目の社長は、僕と同い年のフィレンツェ留学時代からの友人で、フィレンツェの老舗高級オーダー靴店ステファノベーメルで修行をしていたJ君だ。
今日はあいにくすれ違いで彼は東京に行っているらしく再会は出来なかったが、彼がヨーロッパで直接買い付けてきたスペイン製のスニーカーを購入。横着な僕は、靴紐のない靴が好きで彼のチョイスはぴったりなのだ。
さて、今度は江ノ電にのる。
長谷まで行き、そこから歩いて御霊神社 へ。江ノ電の線路をまたいで入る境内は、とても親近感の沸く静かで小さな神社で、幼いときに遊んだような錯覚を覚える。長谷のあたりは、江ノ電が民家の軒下に迫り、線路内立ち入り禁止どころか、線路を走って駅までたどり着き、そのまま電車に飛び乗る少年の姿がとてもうらやましい。鎌倉育ち。
そのまま海岸に出て、稲村ガ崎まで海沿いを歩く。雨空の荒れた海にたくさんのサーファーが出ている。僕は海の塩っぽさがルーズな感じがするので、海のそばで暮らす想像をしたことがないが、両親がサーファーの家に生まれた子ならばやはりサーフィンをするのだろうな、とまた勝手な話をして風の気持ちよい夕方の海沿いを歩く。
最後の訪問地は、極楽寺 へ。小さな小川が流れる極楽寺駅の脇を通り、桜橋を渡った駅のそばにぽつんとある極楽寺。残念ながらもう時計は5時半になり、拝観はできず。でも藁葺きの山門から覗く境内はひっそりと静か。また来よう。
6時を過ぎ、少しずつ日も傾いてきて、おなかのカレーもこなれて来たので、今日の晩飯どころへ。
極楽寺から腰越まで江ノ電に乗り、すべて腰越漁港で取れる地魚専門店「しらすや」 へ。
名物は、取れたてピカピカの生しらす! が、今日は時化により、水揚げがなく、残念ながら生しらすはないとのこと。。。う~ん無念。
でも、そのほかにも旨い魚がたくさん。
刺身、煮魚、タタミ、釜揚げしらす丼など堪能。
刺身。このめちゃくちゃ長い嘴を持つ魚は、太刀魚に似た白身魚で、身がしっかりしているけどくせがなく美味。名前を失念。
旨い魚とビールで話も弾み、結局10時過ぎの閉店時間まで、4時間近くお邪魔する。
お店を出て、深夜の江ノ電にのり、大船経由で品川に着いたのはもう深夜12時。
あいにくの天気と思いきや、小雨交じりの鎌倉は、非常に表情豊かで、むしろ一番鎌倉らしい優しい風情を感じられるかもしれない。とても充実した一日でした。
日帰りでも十分すぎるほど堪能できる鎌倉。忙しい人ほどお勧めです。どうぞ平日の雨の日に。