代表の藤森です。
ADAMでは、お客様からお預りした宝石を使って、リフォームやオーダーメイドの加工を行っています。
お預かりした石の種類がお客様もお分かりにならない場合や、
似通った石で、肉眼で見ただけでは判別がつかない場合があります。
そんな時、アトリエでは様々な方法で石の判定作業を行います。
まずは手持ちの10倍ルーペで観察を行います。
こちらは、もう10年以上愛用してるZEISS(ツァイス)社の10倍ルーペです。
プラスチックのボディーが特徴で、小さくて軽いだけでなく、 もしジュエリーに触れても傷つかないなど、
海外へ仕入れに出かける際も手放せません。
10倍ルーペで覗く世界は、全く別の世界です。
自分の爪を眺めても、表面の起伏がはっきりと見え、爪の状態がよくわかります。
肉眼では見えなかった石も表面や内部のキズや内包物がどんどん眼に入ってきます。
特にダイヤモンドの鑑定(グレーディング)では、10倍ルーペで内包物が見えるか見えないかで、クラリティーグレードが分かれます。
>>ダイヤモンドのグレードについて詳しくはこちら
次に、もっと拡大して観察を行いたい時は、双眼の宝石顕微鏡を使用します。
こちらは、最大30倍の拡大が可能で、しかも両目で見ることで、 対象を立体で見ることが出来るため、特に石の内部の内包物を観察するのに優れています。 焦点距離や光の種類、光量、光線の絞りなどを変えて詳細に観察します。
上記のルーペや顕微鏡で観察をするだけでも、石ごとの特徴により、おおよその判別がつきますが、 それでも判別がつきにくい場合、続いて科学的な検証方法で判別を行います。 まずは、宝石の偏光性の検証です。
天然の宝石は、それぞれの結晶体の構造により、一方向の光が宝石に入った際に、 1本のまま宝石の中を進む単屈折の石と、内部で2本に分かれて屈折して進む複屈折する石に分かれます。 その偏光性を「宝石偏光機」で判別します。
同じ石を回転させてると、今度は光が内部で屈折して光が見えません。
その結果、この石は内部で複屈折していることがわかり、偏光性のある石ということが判別出来ました。
その方法の一つに宝石の屈折率の測定です。
光が物質を通過する際に、どのくらい光が曲がるかを屈折率といいます。
天然結晶である宝石には、それぞれ固有の屈折率があります。
こちらが、屈折率を測定する宝石屈折計です。
測定したい、宝石をのせゲージを覗き込むと・・
目盛りに光が当たっている部分とあたらない部分の境目がこの石の屈折率となります。
この石は「1.67」くらいを示しています。
綺麗な淡いピンク色の石でしたが、内包物もほとんどなく、色も均一だったので、
もしかしたら人工石?!もしくは色ガラス?!という疑問が生じたので上記の判定作業を行いました。
その結果、
・10倍ルーペおよび宝石顕微鏡で観察したところ、天然石だと思われる小さな内包物が確認できたこと
・同じく、石の表面のキズが、ガラスで出来たもののような小さな欠けなどがなかったこと
・宝石偏光機で偏光性が確認出来たこと
・宝石屈折計で、屈折率が1.67であったこと
上記の特徴から、この淡いピンク色の石は、天然の「クンツァイト」である可能性が高いと判定しました。
可能性が高いとしているのは、石によっては人工石であっても、屈折率などの特徴が非常に似通っていることがあること、
また天然石どおしでも近い特徴の石があり、明確な判定が難しい場合があるためです。
確実にどんな石かを判定するには、専門の鑑定機関による鑑別が必要になります。
ADAMでは、鑑定機関によるお預りした石の鑑別やダイヤモンドの鑑定(グレーディング)も承っておりますので、
お気軽にご相談ください。
>>石の鑑別について詳しくはこちらをご覧ください
アトリエでの作業のうち、番外編ともいえる石の判定作業のご紹介でした!